文豪・漱石を悩ませた痔とは──『明暗』に描かれた、痔瘻手術の実態
夏目漱石の小説『明暗』は、痔瘻(じろう)手術について
主人公が医者に説明を受ける場面が、冒頭から登場します。
現代でいう、インフォームド・コンセントというわけですね。
医者は、主人公の痔が外痔瘻(肛門の外に開口するもの)と思って治療していたら、
完全痔瘻(肛門の中と外、両方に開口するもの)だったため、
切開手術が必要だと説明します。
「穴(瘻管)の掃除ばかりしていても駄目なので(略)“根本的の治療”として切開する」
など、迫真の描写がつづきます。
迫真の描写になるのも、無理はありません。
漱石は、この『明暗』執筆(大正5年)に先立つこと5年。
明治45(大正元)年9月、みずから痔瘻の切開手術を受けていたのです。
漱石の日記によると、昼12時ごろ手術開始。
コカインで局所麻酔し、20分ほどかかった、とあります。
手術後、麻酔が切れ、安静に横になっていた時の描写は、
「夫(それ=手術で切った括約筋)がちぢむ時、みょうに痛む。
神経作用と思う。縮むな、といふideaが頭に萌すと、どう我慢しても痛む。」
と、いかにも漱石らしい文体で、冷静な観察をしています。
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